虐待の連鎖

親から虐待された人は我が子を虐待するかと尋ねられたら、他人様のことはわかりませんが、自分は母親と同じようなことをしました。専門的に言えば難しい言葉が出てきましようが、自分のやる事は母親がやってきたのだから違和感がありませんでしたし、怒りのほこさきは母親へも向かっていたのかなと考えていました。それでも娘に暴力をふるった後は後悔と哀しさしかありませんでした。まだ太陽の沈まないオレンジ色の明るいある夕方、4歳の娘とふたりで帰宅している時でした。理由は思いだせないのですが、彼女が何をしたのかも記憶にありませんが、彼女の頬を叩きました。娘が泣きだす前鼻血がす-と、ひとすじ流れました。その日は東の空までオレンジに染まっているかのようで明るく娘の鼻血の赤色がひときわ美しく、神々しく感じました。私は怯えました。自分の罪を娘に詫びて小さな体を抱きしめました。それ以来娘に暴力を振るったことはありませんでした。日常生活の会話もゆっくりと丁寧にするようになりました。成長した娘が、[母さんは私に暴力も振るったこともないし、言葉も優しかった]と言った時あの神々しいまでキラキラした夕方の事件は口にだせませんでした。