老いた母の手が握れないなんて…

由々しき問題です。母と手をつなぐことが難しいなんて。母は10年前に亡くなりましたが、親不孝な娘だったでしよう、母にとっては。母の手は私にとっては凶器でしたね。物心ついてからの母の手は暴力の手でした。私も負けん気の性格ですから、母の思う通りにゃならんです。毎日叩かれてると気を抜けないですから。子どもは私だけですから、当たりは厳しいです。なして母は暴力を振るったのでしようか。自分なりに考えたんですけど。姉が3歳で亡くなりました。早く亡くなる子どもは違うと姉を知る人は言ってました。母に似て可愛い顔立ちをしていました。母は姉を大変愛してた。私が生後6カ月、姉は3歳。疫痢で一夜にして亡くなったのだから、いかにつらかったか。私が死ねばよかったのじやないかなと考えたことは何度もあります。可哀想な母だったと思うのです。母は私が姉のように顔立ちがよく、おとなしく、賢い女性であることを望んだのでしよう。虐待されたことは許してるのに、母の手を愛をこめて握りしめれなかった。老いた、病んでる母の手を拒むことはなかったけれど、最後まで母と一緒に暮らしたけれど、母を愛していたけれど、尊敬もしていたけれど、母の手だけは馴染めなかった。きっと手だけは母の所有物じゃなかったんです。